6月の末、家族で「ほたる祭り」に行ってきた。車で1時間ほどの、山間の小さな町で行われている催しだ。きっかけは、インスタのリールで流れてきた宣伝だった。
田舎の町おこしのイベントらしく、おそらく以前から続いているのだろうけれど、私は今回初めてその存在を知った。蛍に特別な思い入れがあったわけではない。ただ、インスタの動画を眸めていて、ふっと興味が湧いた。
SNSというのは、これまで知りようもなかった地域の催しを自動で教えてくれる。なかなか便利なものだ。
本番は20時、着いたのは16時
週末にちょうど予定もなかったので、家族で出かけてみることにした。会場は、車でしか行けないような場所にある。案内には「駐車場が限られています」と注意書きがあった。駐車場待ちで並ぶのは嫌だったので、かなり早めに出発し、16時ごろには到着した。
駐車場はまだ十分に空いていて、見に来ている人もまばらだった。祭りというだけあって、会場には出店やキッチンカーが並んでいる。
蛍が出てくるのは20時ごろらしい。妻からの情報である。かなりの待ち時間だが、過ごし方は事前に考えていた。この町は温泉街でもあり、会場のすぐ隣には温泉に入れる施設がある。まずはそこでひと風呂浴び、あとは出店の食べ物をつまみながら、のんびり時間をつぶす。そんな算段だった。
1100円のケバブサンド
それにしても、祭りの食べ物は高くなった。最近の物価高で出店の値段も上がっている、という話をSNSで見た記憶がある。けれど、それは日頃から自分でも感じていることだ。祭りで何か買うと、小銭ではなく、千円札単位で財布からお金が消えていく。
今回いちばん印象に残ったのは、会場で売られていた「ケバブサンド」だった。値段は1100円。祭りで買うにしても、さすがにちょっと高すぎやしないか。そう思って、しばらく考えてしまった。
そうこうしているうちに、少しずつ日が暮れてきた。客も増え、いつの間にか駐車場待ちの車で渋滞ができていた。早く来ておいてよかった。
待つのが、苦にならなくなった
また年齢の話になってしまうのだけれど、若い頃は、何をするにも待ち時間が無駄に思えていた。できるだけギリギリに家を出て、できるだけ効率よく動きたい。そんなふうに考えていた気がする。けれど実際には、混雑や駐車場探しでイライラしてしまい、得をした記憶はあまりない。
それが年を取るにつれ、待つことがあまり苦にならなくなってきた。早めに出て、余裕を持って着く。あとは、ゆっくり待つ。
スマホという、いくらでも時間をつぶせる道具があるのも大きい。もっとも、そんな中年の時間感覚に付き合わされる子どもにとっては、いい迷惑かもしれない。そこは少し申し訳なく思う。
濁流と、数匹の蛍
いよいよ暗くなり、蛍を見るために、会場の裏手にある川へ移動した。蛍というと、小さな浅い小川のほとりで見るようなイメージがあった。けれど、そこにあったのは幅6メートルはありそうな、なかなか立派な川だった。

こんな川だった
しかも、ここ数日降っていた大雨のせいで、川は濁流になっている。ごうごうと音を立てて流れていて、とても蛍を眺めるような風情ではない。
それでも、観客は数百人はいただろうか。みんな川の手前に集まり、蛍が出てくるのを待っている。激流と、大勢の人だかり。思い描いていた蛍狩りとは、ずいぶん違う光景だった。
その濁流のせいか、蛍はほとんど姿を見せなかった。対岸はすぐ森、というより山になっていて、その木々の中に、数匹の光がぽつぽつと見える程度だった。時折、遠くでふっと光る。そのたびに、観客から小さな歓声が上がる。
そうして20分ほど粘ってみたが、蛍が増える気配はなかった。これ以上待っても変わらなそうだし、帰りの渋滞に巻き込まれる前に、早めに引き上げることにした。
それでも、楽しかった
想像していた以上に、蛍はいなかった。とはいえ、サムネイル画像にあるような、無数の蛍が乱舞する光景を、最初から本気で期待していたわけでもない。まあ、こんなものだろう、という感想である。
温泉に入り、祭りを楽しみ、少し遠くまでドライブもできた。全部ひっくるめれば、十分に楽しい一日だった。
蛍と聞いて思い浮かべるのは、テレビやアニメですり込まれたのか、「無数の蛍が舞う幻想的な光景」だ。ああいう景色は、本当に現実に存在するのだろうか。少し調べてみると、どうやら日本各地に蛍の名所はいろいろあるらしい。
私は、いつか行ってみたい場所を忘れないようにリストにしている(実際には投資を優先していて、実行するのは当分先になりそうなのだけれど)。今回のことで、そのリストにひとつ、項目が増えた。
「いつか、有名な蛍の名所へ旅行してみる」
数匹の蛍しか見られなかったけれど、新たな目標ができるきっかけにはなった。


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